地獄船
その柔らかな頬の感触にドキッとしてしまい、慌てて手をひっこめた。


自分から触れておいてドキドキするなんて、俺って案外チキンなのか?


「もう忘れたの?」


綾が一歩近づいて来た。


シャンプーの香りが漂ってくる。


「えっと……なんのことだっけ?」


俺は至近距離の綾と視線を合わせることができなくてたじろく。


その瞬間、綾が俺にだきついてきたのだ。


距離感、ゼロ。


一瞬頭の中は真っ白になっていた。
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