地獄船
俺は自分の腕の中に綾の温もりを感じながら、混乱していた。


綾だって俺と同じはずだった。


いいなづけ以外の人間を好きにならないように気をつけていたはずだった。


それなのに、どうして?


「だって好きになっちゃったから」


腕の中で綾が答える。


その言葉に胸がギュッと苦しくなるのを感じた。


だって好きになっちゃったから。


なんて単純で簡単な答えなんだろう。


だけど、それがすべてなんだ。
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