俺様外科医との甘い攻防戦

「陽葵さんも、大変でしょう。こいつ生活能力皆無のくせに、陽葵さんと暮らすからって料理人追い出したらしいから」

「え」

 目が点になっている私の前で、ふたりは言い合っている。

「お前、わかってて、わざと言っているだろ」

「なにが? やっぱりまだ話していないんだ」

 目が回りそうな気持ちになりつつも、「『話していない』って、なにがですか?」と、横槍を入れる。

「それは……」

 口籠る久城先生の隣で、涼介さんが流暢に話し出す。

「蓮弥の父親は、不動産を手広く扱っている人でね。家にはお抱えの使用人がたくさんいるようなお坊ちゃんで」

「えっ。あの、人の良さそうなお義父様が?」

 既に両家の顔合わせは済んでいる。
 お洒落なレストランで会ったときは、上品ではあるものの、ごく一般的な方だとばかり。

「どうせ両親にも、家柄を伏せるように言ったんだよ」

「そんな……」

 今から結婚するというのに、隠し事があるなんて。
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