俺様外科医との甘い攻防戦

「久城先生?」

 シーツに包まったまま、くぐもった声を出す。

「蓮弥って呼ばないと、キスするって言っただろ」

 からかうような、あまやかすような声を聞き、それから唇の辺りに優しい感触があった。

 シーツ越しのキスは、胸を痛くさせる。

 久城先生は私の横に体を預け、シーツごと私を抱き締める。

「市原さんが心配してたぞ。『奥村さん、責任感が人一倍強いから、手術見学できなくて落ち込んでいるだろうなあ』って」

 市原さんに話したことがあったかもしれない。それを覚えていてくれて、心配してくれるなんて。

 嬉しく思いつつも、今は上手く心に届かない。

「手術見学は、平気だと思っていても途中気分が悪くなって倒れる奴もいる」

「でも! でも、医療従事者として血が苦手なんて……」

 情けない声が出て、口を噤む。
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