遺書
そう頷いて、先生は普通なら異常と思える量を疑わずに掌に錠剤を乗せて、食べるように服用する。

「私は帰りますから、全部飲み干してくださいね」
「ああ、分かった」
「それでは、先生。……さようなら」

僕はゆっくりと扉を閉めてアパートを出て行った。
その後は何食わぬ顔で先生のアパートに行き、自殺をほのめかす証言をした。由理ちゃんが持っていた遺書が先生の自殺を裏付ける証拠になればと思っていたけど、雑誌が入っていて拍子抜けしたよ。遺書らしいことは何一つ書かれていなかったから。
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