俺様天使の助手になりまして
私だけの、天使
[私だけの、天使]

 ダン!と、床を踏みならす音。竹刀を打ち合わせる音。「やああっ」と、元気なかけ声が響く。

 私は今、藤松剣友会に来ている。

「もっと大きくふりかぶって打ってね。そうすれば、当たるようになるよ」

「はい! ありがとうございます!」

 可愛い女の子がにこっと笑う。まだ剣道始めたばかりの初心者だった。次の子は、小学校中学年くらいの男の子だ。

「はい! 次!」

「はい! おねがいしまーす!」

「やぁーーーっ! めぇーーん!」

 パシーンと、痺れるような、余韻のある良い音がする。声も大きくて元気がいいし、この子は強くなりそう。

「打つ時、もっと、踏み込みを強くしてみてね」

「はい! ありがとうございます!」

 子供たち全員の稽古を終えて、面を取って、お茶を飲む。

 久々の防具をつけての稽古で疲れた。でも、やっぱり心地いい。

 山の上神社でアクマ天使と別れてから、いろいろ考えた末に、私は剣道をやり始めることにした。

 やっぱり警察官になりたいと、あの出来事を振り返って改めて思ったんだ。私はパパ似だって。昨日の夜、ママにもそう宣言した。

『私、警察官になる! 警察官になって、ママや私みたいな思いをする人を、一人でも多く減らしたい!』

 パパの写真の前に座ってもらって、向かい合って真剣に言った。ママは、驚いた顔をしていたけれど、すぐに笑顔になった。

『そうだね。朱里は、他の誰でもない、この、パパの娘だもんね。しっかり頑張りなさい』

 そう言ってくれた。
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