俺様天使の助手になりまして

 逃げるように走っていく瑠璃菜に手を振って、アクマ天使を見上げた。

 この顔にはちっとも相応しくないけれど、そうだよ、天使の仕事といえばアレじゃない。

「ね、キューピットしてよ」

「あ? キューピット? お前何言ってんだ」

 眉間にしわを寄せて、心底分からないって顔をしている。

 あれ? もしかして、天界では呼び名が違うのかな。

「ほら、ハートの矢でプサッと刺すと、恋が生まれるじゃない? あれ、してよ」

 子供の頃に絵本で見た。それが、天使の仕事でしょう? 

 アクマ天使はしばらく考え込んだ後、「ああ」と脱力感たっぷりな声を漏らして顔を上げた。

「お前が言ってんの、アレか。アレは、力のないチビどもが気まぐれでするイタズラ仕事だ。大体、幸せってのは、造られたり与えられるもんより、自分で掴み取った方がいい。螺旋髪だってそう思うだろ。そもそも、俺のは武器としての弓矢だ。役割と威力がまるで違う」

「威力が、違う?」

「アイテムには、力に見合った等級がある。俺のは、悪を滅する力を持つ、最上級だ」

 ヤな事を思い出した。アクマ天使は初対面なのに、イキナリ弓矢で狙って来たんだった。

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