時雨刻
そもそもの事の始まりは、わたくしが、とあるお方を見初めたことでございました。

その頃(といっても、ほんの二年ほど前のことですが)、私は丁度、嫁いだ家から離縁されたばかりでした。

出会ったのは、わたくしの友人が主催するチャリティーバザールの会場で。

女学院以来の友人である彼女は、地元に戻り、何もせずにただ鬱々と日々を過ごしていたわたくしを見かね、外の世界に引っ張り出してくれたのです。

活発な彼女と違い、そのようなことはついぞしたことがなかったわたくしでしたが、厳格な実家では、出戻りの娘としてどことなく肩身のせまい思いをしていたものですから、さして迷いもせず、彼女の誘いを受けたのです。


その日、わたくしは、件の彼女とともに、彼女のサークルで拵えたガラスビーズのアクセサリーや、仕立て直した古着などを売っているブースの売り子をしておりました。
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