カラダで結ばれた契約夫婦~敏腕社長の新妻は今夜も愛に溺れる~
「城ケ崎、さ――」

「違うだろう?」

顎を掴まれ、口を押し開けられる。思いっきり深く入り込んできた彼に降参して、清良は甘い悲鳴を漏らした。

「っ……総司さ……」

「そう。君はいい子だ」

素直に呼び方を訂正した清良に、彼はご褒美の愛撫をもたらす。心が、そして身体が、じわじわと彼に絆されていくのを感じる。

「どう……して……」

息を絶え絶えにして尋ねると、彼は目を閉じたまま「ん?」と首を傾げた。

「なんで……こんな……私と……」

何も持たぬ自分と、本当に利害の一致だけで結婚しようというのか。

どうしても理解できなくて、清良は納得できる理由を必死に探そうとする。

彼は世界を股にかける大富豪。自分と同じ世界で息をしていることすら信じがたい。

そんな人から、口づけをされてしまうだなんて、それだけでも現実味がないのに、プロポーズまで。

「『こんな』なんて、自分を卑下するものではない。少なくとも君は、俺の欲求を満たした」

満たしただなんて大袈裟だ。少し興味を持たれただけだろう、唇を許す程度に。

未だ困惑する清良に、彼は甘い笑みを浮かべて挑発する。

「それに、君がいつまでもそんな格好をしているからいけないんじゃないのか? まるで俺の自制心を試しているみたいだ」

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