chocolate of midsummer〜遅咲きのバレンタイン〜
あたしはアルトパートを歌う。アルトパートの隣には男子たちが立つ。あたしの隣はさっきの男子ーーー南栄治(みなみえいじ)だ。

「あ、あのさ……」

あたしが話しかけようとすると、音楽が鳴り響いてあたしの声はあっという間にかき消されてしまった。

どうして八月になっても謝れないんだろう……。あたしの中にあの日の後悔が浮かんだ。



始まりは、去年のクリスマスだった。クリスマスの日は部活がなく、あたしは栄治や合唱部の仲のいい先輩たちとカラオケに行っていた。

栄治とは高校の男子で初めて仲良くなった男子。口が悪くて世間でいうツンデレってやつだけど、いつの間にか好きになってた。

「今日はせっかくだし、六時間くらいいよう!」

先輩がそう言い、クリスマスソングを熱唱してカラオケが始まる。楽しい時間になるとあたしたちは信じて疑わなかった。

順番にマイクを回して歌っていたんだけど、友達の一人が「時期はまだ先だけどこの歌を入れたよ〜!瑠夏と栄治くんで歌いなよ」と言いマイクを渡してきたのだ。
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