【修正版】午前8時のシンデレラ
おまけに化粧もせずぶ厚い眼鏡をした姿では、彼の興味など引くことはない。
こんなことなら、社内のTOEICのテスト真面目に受けるんじゃなかった。
出るのは溜め息ばっかりだ。
父がイギリス人で、容姿も周りと違ったからか、中学生の時はいじめにあった。
髪の毛を切られ、教科書も捨てられ、靴も何度も捨てられた。
それで、自分の事が嫌いになり、高校生になってからは、自慢だったハニーブラウンの髪も黒に染めた。
ぶ厚い眼鏡で、ブランデー色の瞳も見えにくくした。
そして、自分の存在を薄くした。
もう目立つことはしたくなかったのにな。
一条さんのアシスタントになるということは色んな意味で目立つし、女性社員からの嫌がらせも覚悟しなくてはいけない。
だが、私に拒否権はないのだ。会社の命には従わなくてはならない。
今、辞める訳にはいかないのだ。
「東雲さん、荷物は後で部下に届けさせるから心配はいらないよ」
気落ちする私を気遣う部長。
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