【修正版】午前8時のシンデレラ
どうしたら杏樹さんみたいに優雅に歩くことが出来るんだろう。
周囲の視線を痛いほど感じるが、私ってそんなに場違いなのだろうか。
男性はタキシード、女性はカクテルドレスが多いようだ。
私も杏樹さんが行きつけのブティックで選んでくれた黒のビーズのカクテルドレスを着ている。
靴もアクセサリーも総て彼女のチョイスだ。
本当に彼女に魔法をかけられたかのように、鏡に映った自分はキラキラ輝いて見えた。
だからかな。一条さんに好きと伝える勇気をもらえた気がした。
杏樹さんがいなければ、今ごろ家で普通にご飯を食べていたかもしれない。
彼は私があの夜の女だと気づくだろうか?
一条さんはどこにいるんだろう?
キョロキョロと辺りを見回すが、人がたくさんいるせいか彼の姿が見えない。
「こんなことなら杏樹さんと一緒にいれば良かった」
ハーッと少し落胆しながら、給仕からシャンパンを受け取る。
酷く緊張していて喉が渇いたのか、一気に飲み干した。
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