妄想人間 田丸。
今この瞬間、俺は地球でたった一人になった

いや、『俺はたった一人のかけがえのない存在』とかそんなんじゃなくて
本当に地球で俺しかいなくなった。

もう本当に。本当に。


最高だ!!!


「田丸」
Chapter1

またいつもの朝だ。
適当に起きて適当に飯食って、適当に学校行って、特にやることもなく授業聞いて
部活している奴らを鼻で笑いながら
下校道を歩いていた。

俺は早く帰ってやることがある。
誰にも言えないけど…。

すると前の方にバカの集まりで毎度おなじみのサッカー部の奴らが大人数、サルみたいに固まって話をしながら帰っていた。

「俺はUFOいると思うんだよな〜」

「はぁ?UFOなんているわけねぇだろ」

俺の前にいるせいで邪魔で通れない…。

「いやいや、UFOってさ火星人が操縦してるんじゃなくて近未来人が操縦してるんだよ」

邪魔だ、早くどいてくれ

「んで、その近未来人が昔の時代にタイムスリップしてここに来てるらしいよ。歴史的な事件にUFOの目撃情報が多いんだって。」

馬鹿馬鹿しい。

目撃情報が多いのは、その起こった事件のことで人間はショックやパニックに陥り
一時的にそういう不可解なものを見るんだ。
多分そういう変なものを脳が勝手につくり、見せることでさっきの出来事を忘れ
UFOに意識を向かせるようにしてるんだと俺は推測する。

てか、なんで俺こんなこと知ってるんだろ。

あ、昨日テレビでまったく同じ内容やってたっけ。
少し顔が赤くなった。

そんなことはどうでもいい、

早く帰れ。サッカー部の奴ら。
サッカー部の集団は角を右へ曲がった。
よし、これで走って帰れる。
革靴で走りづらいけどなんとか体勢を直しながら走る。若干何かに取り憑かれたような顔している。

「なんだ、あいつ。 いつも走って帰ってるよな、あいつ名前なんだっけ…」

サッカー部のキャプテンが口を開く
「あー、あいつ? あいつ確か田丸陳(たまる ちん)だよ、みんな『たまちん』って呼んでるよ」

それを聞いた池田が腹を抱えて笑った。
「なんだよwその名前ww、めちゃくちゃおもれーじゃん!」

「確かお母さんが中国人でその名前にしたらしいよw、俺が小学生の時同じ班になったんだけどその時あいつ話してたな。」

まだ腹を抱えて笑っている池田が
「おーい!タマチーン!タマチーン!」

ダッシュしてる田丸に向かって叫んだ。
そんなことは一切聞こえない田丸

でもなぜか田丸は家族のことを思い出す
嫌悪感だ。
母親は中学生の時まで中国にいて途中から日本に来たらしい。
じいちゃんの転勤で日本に来たらしいけど

あー!あのクソ親。
また嫌なことを思い出した。

この前、映画のスタンドバイミーを観ていた時、途中から親父がリビングに来て映画を見始めた。

俺はスタンドバイミーの最後のシーンが好きで、小説家を目指している少年がどうせ夢は叶わないと友達のリーダーに話すと、お前ならきっと素晴らしい作家になれるよと励まし、

そこから三十年後、パソコンをいじったシーンから切り替わると実はその少年が小説家になって夢を現実にしているという素晴らしいラストだ。

そしてあの名曲のイントロが入る。

その時、親父が曲に入る一個手前で歌を歌いやがった。

あー!今思い出しただけでも腹立つ。

なんであのタイミングなんだよ、他に歌うシーンどこでもあったろうが、今度から映画は絶対一人で観るって決めよ。

走りながらだが怒りがふつふつと湧き上がってきた。
そんな事を考えるとあの時の情景がハッキリと目に浮かぶ。

色々なゴミが乱雑に置かれたテレビ台、
壁には旅行で撮った家族写真。
右手でポップコーンを持ち、テレビの再放送でやっていたスタンドバイミーの画面右下には時刻8時36分。

そこで親父が隣のソファーに座ってきて
あのシーンで本腰で歌いやがったんだよな

そんなことを考えていると自分の家をとっくに通り過ぎていた。
フッと我に返り、何をやってるんだと電柱を手の甲でトンっと一回叩く。

ちょっと強くやりすぎたか、痛い。

家に着きカバンをリビングに投げるように置き一目散に自分の部屋へ向かった。

よーし、今日は誰もいないし。親はどっちも仕事に出掛けている。

最高かよ…。
ベットに仰向けになった瞬間


急に目の前が全て、白くなった…。
俺もついに幻覚見るようになったか。
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