予想外の妊娠ですが、極上社長は身ごもり妻の心も体も娶りたい
 短く切りそろえられた爪にネイルは塗られていない。けれど、きちんと手入れをしているんだろう。
 ピンク色の爪には艶があり、人工的な色を重ねて誤魔化すよりも、ずっと美しく見えた。


 
 今日は俺の社長就任のパーティーだった。


 祝いの席なのに、秘書は裏方だからと気を使ったのか、彼女が着ているのはシンプルな黒のワンピース。
 
 黒髪をうしろでひとつにまとめ、アクセサリーは耳につけた小さな真珠のイヤリングだけ。
 
 華やかに着飾った参加者の女性たちに比べれば、質素すぎる装い。
 
 ゴージャスなこの会場を中では埋もれてしまいそうなのに、気が付けば吉木の白い肌や綺麗な立ち姿をながめてしまうのはなぜだろう。
 
 そんなことを考えていると、吉木は俺のネクタイから手を離す。
 そして、美しく整ったネクタイを見て満足げに口元をほころばせる。

「さ、新社長の挨拶をみなさんお待ちかねです」

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