記憶の糸。
「……っ」

私は、ゆっくりと目を覚ます。いつもとは違う景色に、私は驚いた。

どこかの屋敷のような感じだ。何か、私、着物を着てるし……。

「今日は、早く目を覚ましたのだな。春枝(はるえ)」

着物を着た男性が、私の方を見て微笑む。……春枝?

「……義也(よしなり)様……」

私の口から、出た言葉。あれ?私、この人を知ってる……のか?

「今日も、そなたは美しい。そなたと夫婦になれて、私は幸せじゃ」

「……私も幸せです。この子たちにも、この幸せを分かち合えたら……」

そう言って、私はすやすやと眠ってる女の子と男の子2人に目を移した。

何でかは分からないけど、自然とこの人のことが分かるんだ……何でだろ?

この人の名前は、春枝。戦国時代に生きていた貴族……らしい。女の子と男の子2人の子持ち。

ってことは、ここは戦国時代?

「そうだな。春枝、愛してる……そろそろ私は寝る」

そう言って、私にキスをした義也様は襖を開けて部屋を出る。そして、襖を閉めた。

ちょっと!この人は、君にとっては愛する人かもしれないけど、中身は普通の女子高生なんだけど!?

「……これ、夢……だよね?」

私は、ころんと横になって呟く。……に、しては結構リアルだ。さっきのキスの感覚も、私の意識も。

「……どうしよ……明日も学校があるのに」

……もし、このまま戻れなかったら?
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