追放された公爵令嬢、隣国で成り上がって全てを見返す
「それは大変魅力的な話ですが……」

ペトラにとって、魔物牧場の話は渡りに船だった。

引き受ければ、仕事と住居の問題が同時に解決する。 彼女が渋っているのは、牧場の経営者がこの男だけだから。

関所の一件で男性恐怖症に陥っていることから、不安が強かった。

ついていって襲われたらどうしよう。そんな思いが頭から離れない。

「駄目かい? 君は今時の若者にしては意欲がありそうに見えたから期待していたんだが、残念だ。牧場の仕事は忙しいから、気乗りしないのも無理はないか。それじゃ、また縁があればどこかで」

「ごめんなさい」

「大丈夫。いい仕事が見つかることを祈っているよ」

男はあっさりと引き下がった。

ペトラに背を向けて、ゆっくりと歩いて行く。

(やっぱり……!)

男の後ろ姿を見ていて、ペトラは考えを改めた。

この人ならきっと大丈夫。そう直感が囁いている。

「待って下さい!」

「ん?」

振り返る男。

「働かせて下さい! 絶対に後悔させませんから、私を雇って下さい!」

ペトラは深々と頭を下げた。

男は柔らかな笑みを浮かべ、「ありがとう」と返す。

精一杯の勇気を振り絞り、ペトラは新たな一歩を踏み出した。

今はまだ小さな一歩だが、いずれは幸せなゴールに辿り着く一歩。

ペトラは魔物牧場で働くこととなった。

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