小悪魔王子に見つかりました

普段、私はお昼は弁当だから、食堂に行くことはないけれど、

もし貰えることができたら、羽芽ちゃんたちと行ってみたいな。

うちの学食、ご飯だけじゃなくてデザートも充実してて美味しいって評判だって聞いたことあるし。

なんだか、私も、ジンクスよりもそっちに心奪われ始めている。

どうせなら、全力で頑張って1位をとって、みんなで美味しいご飯を食べたいかも。

だけど寧衣くんの表情はまだ納得してなさそう。

「……そんなもの、」

「寧衣にとっては大したものじゃなくても、俺にとっては、あると死ぬほどありがたいものだから。頼む。優勝に協力してくれ」

木野くんってほんと見た目によらず、誠実な人なんだな。

「はぁ……」

「……俺んち母子家庭で、俺の下に3人、妹と弟がいてさ……今度、弟の誕生日で。そんな日ぐらい贅沢させてあげたいから、できれば俺にできること、でかいことはできないけど、節約ぐらいならできるし、だから、」

「あーー!もー!ストップ!わかったから!わかったから!家のこと持ち出してくるのはずるいから」

負けたよ、と言いたげに寧衣くんが後頭部をガシガシとかく。
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