小悪魔王子に見つかりました

「浅海さん、ちょっとそこ座ろう」

「……へっ、あ、うんっ」

もうお昼休憩はとっくに始まっているから、ご飯を食べる時間を考えると、あまりゆっくりできないけれど。

今の浅海さん、ご飯を食べる元気もなさそうだし。

校舎と体育館を繋ぐ渡り廊下の横にある花壇隣のベンチに腰を下ろす。

彼女のそばを離れたくなくて、2人きりの時間を誰にも邪魔されたくなくて。

座ろうと促したのはいいけれど、なにを話すんだよ、俺。

伝えたいことは、今日この体育祭が終わってから話すって決めているし。

「……ごめんね、寧衣くん。重かったよね」

先に沈黙を破ったのは浅海さんの声。

「いや、全然。むしろ軽すぎて心配になったよ。俺が勝手にやったことなんだから謝らないで。足、痛くない?」

目線を彼女の膝に向ける。
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