小悪魔王子に見つかりました

クラスメイト全員の居場所を守りたい。

最初はそれ以上の気持ちなんてなかった。

……はずなのに。

浅海さんといると今まで味わったことのない感情でいっぱいになってしまうんだ。


「……寧衣くん?」

っ?!

そのか細い声にトクンと胸が鳴ったのと同時に後ろを振り返る。

「浅海さんっ」

「寧衣くんも早起きしたんだね」

そう話かけてきた彼女の表情は、初めて話した日に比べて随分と柔らかくなっていて。

明らかに、内側から浅海さんが変わってきている証拠。

それは、すっごくいいことなはずなのに。

浅海さんのその顔が見たくて、彼女の居場所を作ろうとしたはずなのに。

この心にある引っかかりは何なんだろうか。

潮風が吹いて、彼女の長い髪とワンピースが揺れる。

ドクン。

まただ。

大きく胸が鳴る。

こんなふうになったのは、初めてしっかりと浅海さんの素顔を見た日と、

ヘアピンをつけさせようと目を閉じさせた時。

「おはよう。朝の海、気持ちいいよ。よかったら浅海さんも」

よくわからない自分のこの感情に気づかなかったフリをするみたいに、

彼女に話しかけて、隣に座るように促す。
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