イジワル御曹司は偽のフィアンセ様❤︎
「鴨居君ちょっといいか」

突然部長に呼ばれた。
私の記憶が正しければ、部長とは挨拶程度で会話はほとんどない。
そんな部長の呼び出しに緊張が走る。今まで大きなミスをしたことがない私がなぜ?
何ともいえない不安を胸に部長についていく。
来客用に個室にはいると、部長と向かい合うように座るが、緊張で椅子を引く手もふるえてしまう。

「そう、緊張しなくてもいい」

部長は苦笑いするが、今まで一対一で話したことがない私。リラックスできるはずがない。
椅子に座ると部長はいきなり本題に入った。

「突然だが君に人事異動が出た」

「い、異動ですか?」

私の勤める「東栄テック」はケーブルやコネクタ、光ファイバーなどの電子機器部品を扱う会社だ。我が社の製品は自動車や、電車、飛行機、また医療機器などに使われており、日本はもちろん海外の企業とも多く取引をしている。
私は本社で経理を担当している。
そんな私に突然の人事異動って……やっぱりなにか大きなミスでもしたのかと最近のことを思い浮かべるが、どう考えても人事に関わるほどのミスはしていない。
不安になる私に「びっくりするのも無理はない。僕も驚いた」と部長も納得していない様子だ。

「君の仕事ぶりは評価している。だから僕もこの人事には正直納得はできないのだが……」

それは一度出た人事を覆すことができないということだろう。
でも人事異動になったことで自分がこの部署で高く評価されていたと知るなんて皮肉というべきか……。
だが問題は私の異動する部署だ。
営業とかだったらどうしよう。
あまり人前ではなすのは苦手なのだけど……。

「それで君の異動先というのが……秘書室なんだ」

「ひ、秘書室?」
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