契約夫婦の蜜夜事情~エリート社長はかりそめ妻を独占したくて堪らない~
 いくら優秀だと認めたからといって、自分が築き上げてきた会社を赤の他人に任せるというのはそうそうある話ではない。
 逆にいえば、久我が大東の娘と結婚するという約束があるならば、自然なことだとして受け入れられる。
 大東も久我も明言はしていないが、久我と大東の娘が婚約をしているのだろうというのが、大方の社員の見方だった。
 田所はそのような立場にある久我が、社員に手を出すはずがない、ということが言いたいのだ。

「北見さんは真面目で勤務態度もいいから、合コンなんかに行って大丈夫だろうかと心配されたのかもしれないよ。副社長は社員を大切にされる方だから…。ほらほら、お昼休みの邪魔をしてしまったのは僕だけど、早くお弁当食べないと間に合わなくなるよ」

 田所の言葉を潮に、三人はそれぞれのデスクに戻る。
 晴香は誰にも気がつかれないように、ホッと息を吐いた。
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