雨のち木漏れ日、時々キャンディ



休日で、家族連れの多い水族館の、大水槽の前。



楽しそうな子どもの笑い声が響く、この空間で、私たちを取り巻く空気だけが緊張感に満ちている。



まるでここだけが別世界のよう。




「まあ、元カノさんなら、私たちのことは気にしないでください。」




空気を切り裂くように、一線を引く言葉を放った。



当然の如く、余計に空気がピリピリする。



そんなに怖い顔で私を睨まないでよ。



いくら睨まれても、私は微笑を崩さない。



それが私の意地でもあった。



空気を一掃したのは、圭くんの言葉。




「もう関係ないんだから、いいだろ。」




マキさんを突き放す、一言だった。




「行こう。ユキちゃん。」




私は彼に手を引かれ、修羅場から脱出することに成功した。




私たちが次に足を止めたのは、ミズクラゲの水槽の前。




「ユキちゃん、本当にありがとう。」




「いいの。私は圭くんの彼女なのだから。」





そう、私は彼の彼女。



今日だけは、ね。



< 37 / 91 >

この作品をシェア

pagetop