雨のち木漏れ日、時々キャンディ
休日で、家族連れの多い水族館の、大水槽の前。
楽しそうな子どもの笑い声が響く、この空間で、私たちを取り巻く空気だけが緊張感に満ちている。
まるでここだけが別世界のよう。
「まあ、元カノさんなら、私たちのことは気にしないでください。」
空気を切り裂くように、一線を引く言葉を放った。
当然の如く、余計に空気がピリピリする。
そんなに怖い顔で私を睨まないでよ。
いくら睨まれても、私は微笑を崩さない。
それが私の意地でもあった。
空気を一掃したのは、圭くんの言葉。
「もう関係ないんだから、いいだろ。」
マキさんを突き放す、一言だった。
「行こう。ユキちゃん。」
私は彼に手を引かれ、修羅場から脱出することに成功した。
私たちが次に足を止めたのは、ミズクラゲの水槽の前。
「ユキちゃん、本当にありがとう。」
「いいの。私は圭くんの彼女なのだから。」
そう、私は彼の彼女。
今日だけは、ね。