ふたつの羽根
好きと言う気持ちはだんだん薄れかけている。
だからと言って純也の事が嫌いになったわけでもない。
有亜の言いたい事は十分良く分かっている。
ただ…
今のあたしは何も言えなくて、言えるまでの時間が欲しいだけ。
言うのは簡単なのに純也を前にしたら言えないんだ。
たった自分の思ってる事を言うだけなのに…
口が開かない。
あたしは深く息を吐き「ありがとう」と有亜に伝えた。
有亜はいつもの笑顔で軽く首を振る。
「じゃ帰るね。また明日」
「うん」
有亜は軽く手を振り、あたしに背を向けて歩き出す。