ふたつの羽根

「えっ…、ママ居たの?」 

「居たら悪いの?」


ママはつけている花柄のエプロンで両手を軽くパパッと拭き首を傾げる。


「えっ、だってママ今日はやけに早いじゃん」

「だって今日は里奈…」


続きを遮るように家の電話が鳴り響き慌ててリビングに戻ろうとするママに「ママッ」と叫んだ。


「何?」

「もし誰かが来ても居ないって言って」

「えっ、何で?」

「何でも」 


ママは首を傾げながら鳴り響く電話の元へと駆け寄って行った。


あたしは立ち上がって重い身体を動かせ部屋に向かった。 


今のあたしは窓から入り込む微かな光さえ邪魔物で、それを封じ込めるようにカーテンを閉め、ベッドに倒れ込んだ。


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