極上社長からの甘い溺愛は中毒性がありました


 気がつくと、畔は叶汰の部屋にいた。
 放心状態の畔をタクシーに乗せて連れて帰ったのだ。
 
 『いつまでそうしてんだよ』
 『…………』

 畔が泣き止むまで見守っていてくれた叶汰だったが、痺れを切らしたのか、イライラした様子で手話でそう言った。だが、畔の視界にそれは入っていなかった。

 彼は神水製薬会社の社長ではなかった。
 全くの別人だと、叶汰は話した。そして、それを椿生は否定しなかったのだ。
 という事は、叶汰の話が真実なのだろう。

 (そんなの……どうでもいいのに……)

 あんなにも嘘が嫌いだった。怖かった。
 それなのに、嘘よりも椿生と離れる方がよっぽど怖いと感じてしまうのだ。

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