極上社長からの甘い溺愛は中毒性がありました

   ★☆★

 「俺だって好きだよ」

 言葉を呟いても、畔がこちらを見ていない限り、彼女に届くことはない。
 そんな事はもうわかりきっている事だった。
 けれど、言いたかった。
 畔がいる空間で。

 畔は幼い頃からの幼馴染み。
 気づくと、叶汰の隣には畔が居た。
 純粋で優しくて、そして歌が大好きな女の子だった畔。彼女の隣に居るのはとても心地よかった。


 だが、畔がプロデビューした頃から、叶汰は畔との接し方がわからなくなってしまったのだ。
 彼女を見るとイライラして、眉がつり上がり、口調も荒くなってしまった。
 原因はわかっている。

 幼馴染みである畔の隣という場所が、自分のものではなくなったからだ。
 畔の隣は自分が居るべき場所だったはずた。いつも微笑みかけてくれ、他愛ない話をして穏やかに過ごす。そんな日々が少しずつなくなり、社会人になれば全くといっていいほど、畔との時間がとれなくなった。
 そして、彼女は叶汰に守られなくても自分で生きていける。そんな強さも身に付けたのだ。

 畔は自分を必要としていない。
 それを突きつけられたのだ。


 恋人になればよかったとも思う。
 けれど、それはどこか違うような気がしていた。自分は幼馴染みで居たい、と思っていた。
 いや、そう思いたかったのだろう。

 告白して断られたら?
 恋人になっても、最後に別れてしまったら?
 
 そんなことになったら、今まで通りの関係ではいられないのではないか。
 不安が頭の中にあったのだ。

 それを実感したのは、畔に恋人が出来たと知った時だった。

 「気づくの遅い……ってか、俺が意気地無しなんだよな」 

 叶汰は苦笑しながら、テーブルの上に置いた楽譜を見つめた。
 畔と椿生を繋げた曲だ。

 「俺はこの曲嫌いだな………」

 そう呟いてから叶汰はソファに横になり、目を閉じた。
 すると、何故か「青の音色」の曲が頭の中で流れてくる。叶汰は苦笑しながら、畔から貰ったCDを久しぶりに聞こう、と思った。

 もちろん、曲は大嫌いな「青の音色」を。

< 137 / 150 >

この作品をシェア

pagetop