極上社長からの甘い溺愛は中毒性がありました
11話「初めての特別」

   11話「初めての特別」

 前回とは違う待ち合わせ場所。
 畔の最寄り駅を指定してくれたのだ。畔が緊張しながら待っていると、ほど近くに黒い車が近づき、停車した。高級車だというのが、一目でわかる車メーカーのものだった。畔は心の中で準備をしていたが、彼が本当に社長なのだと目の当たりにして、体が動かなくなってしまった。
 畔が戸惑っていると、椿生が車から降りてきて、畔を出迎えてくれた。

 『こんにちは。どうぞ、助手席に乗って』
 『こんにちは。………ありがとうございます』

 畔を助手席に案内した椿生はいつもと変わらない笑顔で、畔に話しかけ、そして気遣ってくれた。
 椿生が運転している時に話が出来るようにと、音声をすぐに文字にしてくれるアプリをスマホに入れてくれていた。そのため、畔はそれを見て頷いたり、メッセージをうって、彼が運転のすきを見て読んでくれたりした。

 それでも、普段の会話よりスムーズではないし、耳が聞こえる人との会話に比べれば、半分もコミュニケーションが取れていないはずだ。それに、どうしても空白の時間が出来てしまう。
 畔はその時間が苦しくなってしまった。彼はこんな事で楽しんでくれているのだろうか?そう思い、運転している椿生の方をチラリと盗み見みた。 

 すると、彼もこちらをちょうど向いた瞬間だったようで、バチリと目があってしまった。
 恥ずかしくなる畔をよそに、椿生は目が合った瞬間にニッコリと微笑んだのだ。
 その笑みはとても綺麗で、そして優しさと「楽しい」という気持ちがにじみ出たものだった。
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