仮面夫婦マリアージュ~愛のない一夜でしたが妊娠しました~
「何だ?お前…」

周防副社長は私の右手を掴み、立ち上がらせてくれた。

「お前の方こそ何だ?俺は彼女の知り合いだ」

「はぁ?知り合いだと??」

酒井さんは驚きで目を見開かせながら私を一瞥した。

「さすがは挙式当日に男と逃げた女だな…今度はコイツと挙式当日に逃げるつもりか?」

「違います!」

私は偶々居合わせた周防副社長に失礼だと思い、声を張り上げて否定した。

「俺の父親が誰か知ってるか?与党の議員だ。邪魔してみろっ。お前、消すぞ」

「…議員ね…俺の伯父は総理だけど…何て名前の議員だ?総理に言いつけて、消してやろうか?」

「何処かで見たコトあると思えば、お前…周防総理の…」


「甥っ子の周防颯真だ…」

酒井さんは顔面を蒼白させて態度をコロリと変えた。

「今のは冗談だ…悪いっ」

酒井さんは周防副社長に腰を謝った。

「消えろっ、鬱陶しい…」

周防副社長は声に怒気を孕ませ、酒井さんを追い払った。
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