仮面夫婦マリアージュ~愛のない一夜でしたが妊娠しました~
「周防さん…どうして?」

「・・・それよりもどこに行くつもりだったんだ?」

彼は私の隣のシートに腰を下ろした。

「博多に行こうと…」

「あてはあるのか?」

「いえ…でも…私…もう…自宅には戻れないし。会社にだって…」

「やはり…何かあったのか…酒井衆院議員のご子息と…」

「彼との見合いは向こうからお断りが来て…」

「そうか…」
(さすがは俺の伯父さん…仕事が早いな…)

「私は二度父の顔に泥を塗りました…だから…もう…」

「だったら、俺と結婚して…全てをチャラにすればいい…」

「えっ?」

私と周防さんが結婚って…
晴天の霹靂のような言葉を訊き、思考がフリーズする。

「まさか…昨日の夜の責任を…」

「・・・そうじゃない…俺も実は強引に結婚させられそうなんだ…良くある政略結婚だ…だから…その…工藤さんと…」

「偽装ってコトですか?」

「そうなるな…俺と結婚すれば、家に戻る必要がないだろ?」

「でも・・・貴方は…」

彼は総理の甥っ子で、周防家の次期当主と噂される御曹司。
「私のような女性では周囲が反対します」

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