仮面夫婦マリアージュ~愛のない一夜でしたが妊娠しました~
翌日。
社長の周防佐久也(スオウサクヤ)さんと共に有楽町の『周防ホールディングス』本社ビルまで足を運んだ。

不動産業界は元々都内に土地を大量に所有している旧財閥企業が多く、わが社もその典型的なモデルだった。

以前は総理となった現・周防家当主・周防莉人(スオウリヒト)さんが会長を務めていたが、政界に進出したのを機に、父である周防悠真(スオウユウマ)に社長職と会長職を兼任していた。

「・・・颯真お前…『協和エレクトロニクス』の工藤社長の令嬢と結婚するのか?」

隣に座っていた佐久也さんが俺の顔を驚いた顔で見ていた。

「え、あ…」

父にはまだ話していなかったはず、誰が話したんだ?

俺は背後に控えていた来人を見たが、彼は首を横に振った。

「工藤社長から・・・娘を頼むと電話を貰ったんだ…俺は適当に話を合わせたが…その顔を見ると事実のようだな…別にお前もいい年だし…反対はしないが…長谷川君の元花嫁で…挙式当日に他のオトコと駆け落ちした女性だ…大丈夫なのか?」

「本当の彼女は実に真面目な女性ですよ…父さん」

「・・・まぁ、お前がそう言うんなら、俺はお前の言葉を信じよう…颯真」

「ありがとう御座います」

「・・・挙式は入籍のみで済ませてもいいですか?」

「お前の自由にしろ」

ウチの父さんと母さんも期限付きの契約結婚から始まったと訊いている。

俺達の結婚も両親の結婚を参考にして考え、思いついた。

「結婚は二人のコトだ。二人で考えてくれ。俺は何も言わない」

「分かりました…でも、近々、彼女を紹介しますので、その時はよろしく」

「それは承知した…」


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