具現化アプリ
「痛ったぁ……」


あたしは顔をしかめて起き上がる。


さっきここへ来たときはなにもなかったのに、一体なんだろう?


振り向いて確認してみても、そこにはなにもなかった。


「血が出てる」


言われて確認すると、すりむいた掌から血が滲んできていた。


「これくらいなら大丈夫だよ」


あたしはそう言い、ハンカチを取り出して傷口に押し当てた。


まだ少し痛むけれど、これくらいなら大丈夫そうだ。


コウダイくんは幽霊を見るのを楽しみにしているし、早く行かなきゃ。


「体育館はこっちだよ」


あたしは気を取り直して歩きだしたのだった。
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