具現化アプリ
☆☆☆

自宅に戻ってさっそく明日の準備をしようと思っていたのだけれど、お母さんに呼びとめられてしまった。


「ちょっとミキコ。吉田さんは学校に来てたの?」


そう聞かれて、吉田さんのことなどすっかり忘れてしまっていたことに気がついた。


「ううん。来なかったよ」


あたしは答えながらリビングのテーブルに置かれていたクッキーに手を伸ばす。


「そうなの……」


お母さんは心配そうな表情になり、あたしを見つめる。


「そんなに心配しなくても、すぐに戻ってくるんじゃないの?」


「それならいいけど、もし事件に巻き込まれてたら……」


そこまで言って、あたしの顔をジッと見つめる。


一瞬ドキッとしてお母さんから視線をそらせた。


でも、お母さんはあのアプリの存在すら知らないのだ。


あたしが吉田さんを消してしまったなんて、考えるはずがない。


「ミキコになにかあったらと思うと心配で」


「なんだ、そんなことか」


呟き、ホッと息を吐きだした。
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