クールな社長の不埒な娶とり宣言~夫婦の契りを交わしたい~
「意外ですか?」

「あ、いやべつに……」

「あいつは、花マルに入るまで十社かな? あれ?もっとだったかな? とにかく面接で落ちまくったらしくて」

「ええ? そんなに?」

 彼が驚くのも無理はないだろう。
 それもそのはずで彼女が『花マル商事』に入社した四年前は、特に就職難というわけではなかった。

「大学を卒業してから二年近く、彼女は一度も仕事は何もしていなかったみたいなんですよ。就職に有利な資格はなにも持っていないし、おまけにパソコンが苦手だけど事務職希望。それをバカ正直に言うものだから。雇う方もまぁ考えちゃいますよね」

「――でも、事務じゃなければ。アパレルとかなら」
 視線を落としたまま彼は「美人ですし」と付け加えた。

「ええ、仕事を探しながらバイトでショップの店員はしていたみたいです。でも、そういうところは当然ですがそのブランドの服を常に買わなくちゃいけないでしょう? となると金がかかるらしくてね。それにあの通り、藤村は大人しいから、色々ときつかったんじゃないですか。本人は何も言わないけど、花マルで事務の仕事について精神的に楽になったって、しみじみと言っていましたよ」

「そうですか」
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