クールな社長の不埒な娶とり宣言~夫婦の契りを交わしたい~
「あ、そういえば例のビルどうだった? 見に行ったんだろう? いい物件だったか?」

「ああまあな。建築士の話だと、手を加えれば建て直さなくてもなんとかなりそうだ。まぁ金はかかるだろうけど、場所はいいし、すぐに元は取れるだろう」

「ふぅん。しかしお前も次から次へと財テクに余念がないねぇ」

「あ、そうそう。今日の午後そのビルにあった会社からひとり、うちに面接に来るぞ。
 時間があったらお前も同席しないか? 四十代の優秀な営業マンらしい」

「ええ? でもそこって倒産する会社だろ?」

「倒産じゃなくて、廃業」

「優秀ったって、そんな会社にいた社員が?」

「訳があるんだとさ。不動産屋に聞いたんだが、なかなかの人らしい」

「へえ。訳ありね。お前は好きだよな、そういうの」

 執務室から出てエレベーターに乗る宗一郎を、後ろから「社長ぉ」と声が追いかけてきた。

 滑り込むように入ってきたのは光琉だ。

「社長ったら、彼女と別れちゃったんですって?」

 ――ったく。荻野の奴、余計なことを。

「社長はね、乙女チックなんですよぉ」

「なんだそれ」

「社長が女の子と続かない理由、ご自身でわかっていますかぁ?」

「さあな」と、宗一郎は、興味なさそうに答えた。
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