クールな社長の不埒な娶とり宣言~夫婦の契りを交わしたい~
 背もたれをきしませながら室井課長は大きく息を吐き、指を首に掛けてネクタイを緩めた。

 アイスコーヒーの入ったグラスに室井が手を伸ばすと、揺れた氷がカランカランと涼し気な音を立てる。

 ぼんやりとその様子を見ていた紫織はポツリと聞いた。

「社長どうでした?」

 室井が出かけていた先は、ここ『有限会社花マル商事』の森田(もりた)社長が入院している病院だった。

 社長が入院してかれこれ一週間になる。

「ん? うん」

 歯切れが悪い室井の返事に、おのずと紫織の眉も曇る。

「具合、良くないんですか?」

「いや? 体調はいいみたいだな。順調に回復しているし」

 それならどうしてそんな風に浮かない顔をしているのか。

 怪訝そうに首を傾げる紫織に、グラスを置いた室井はフッと目元で笑いかけた。
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