クールな社長の不埒な娶とり宣言~夫婦の契りを交わしたい~

「課長、面倒見がいいからちょっとくらい不器用な女の人のほうが合うんでしょ」

「ま、そんなわけで紫織、俺はもうお前が行き遅れても嫁にもらってやれなくなったからな」
 室井は左手の指をヒラヒラさせて結婚指輪を見せた。

「えー困ったなぁ」
「よくゆうよ、幸せそうな顔しやがって」

 紫織はほんのりと頬を赤らめながら、エヘヘと笑う。
 室井だけには、結納が済んだときに報告したのである。

 最初は人目に付かないように気を付けていた交際も、宗一郎のほうが隠すことが面倒になってきたらしい。
 紅葉が色づき始めた頃から、ふたりで一緒に帰るところや食事をしている姿を何人かの社員に目撃されるようになり、いつの間にか社内ではなんとなく公認のようになってしまった。

「それにしても急ですね、もぉビックリですよ」

「だよなぁー。俺もびっくりだ」
 あはは。思わず笑った。
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