クールな社長の不埒な娶とり宣言~夫婦の契りを交わしたい~
「……はぁ」
宗一郎。あなたは想い出も何もかも、無かったことにしてしまったの?
彼の中で、変わらなかったのはテンポドロップだけだ。
天気の変化によって結晶が変わるという、しずくの形をしたガラスの不思議なインテリア。
いまでも紫織の部屋にあるそれは、ふたりが付き合っていた遠い昔、宗一郎の部屋にあったものだ。
『綺麗ね』
大きな物と小さな物があって、宗一郎は小さな物を紫織にくれた。
ガラスを覗くたびに思った。彼もどこかで同じように見つめているのかなぁ、と。
でも、そんなことを思ったのは自分だけだった。彼はただテンポドロップが好きなだけで、ガラスの中に想い出を重ねたわけじゃない。
切ない気持ちを抱えながら見つめていた七年。
紫織は唇をきつく噛んだ。
――私の七年を返せ! クズ男!