Fake love(2)~離婚からはじまる社長の深愛~

「豊…お腹の赤ちゃん…動いてない気がするの」

出勤前の夫の神楽坂豊(ｶｸﾞﾗｻﾞｶﾕﾀｶ）を捕まえ私は言った。

「お腹の中で寝てるんじゃないのか？」

彼は笑って訊き流すと私の大きなお腹を摩り、唇には軽くキスをして部屋から出て行った。

昨日まで、あんなに動いていた赤ちゃんが急に動かないのはおかしいと思い、母に電話をした。

私は母に付き添われ、東亜医科大付属病院の産婦人科外来を受診。

主治医の井沼先生はエコー検査をして、画面に映る胎内の赤ちゃんの様子を神妙な顔で伺っていた。

「先生…赤ちゃんは…」


井沼先生は何も言わず唇を噛み締め、何かを考えていた。