Fake love(2)~離婚からはじまる社長の深愛~
「周りを見るんだ…睦月」

私は豊に言われ、周囲を見回した。
周囲の人たちがチラチラと私達を見つめ、密かに注目していた。

「別居婚」
豊が私の耳許で囁く。兄貴が言っていた噂話だ。

「俺達はそう言われているようだ。さっき有さんから訊いた」

「私も訊いた」

「そう言われたくなければ、俺に構うな」

豊は眉を顰めて鬱陶しそうに吐き捨てた。

「豊はそう言われたくないのね…」

「あぁ」
豊は頷き、私から離れて行った。
鼻腔を掠める豊の香水の匂いは四年前と同じ。
だけど、私達は四年前と違う。

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