ロマンスフルネス 溺愛される覚悟はありますか?
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そんな寂しさを、英会話やジムに行ったり、家で一人お酒を飲んだりして耐え抜いた後のある日のこと。


「むふっ、くふふっ」


会社にいるときからニヤニヤが止まらない。今日は久しぶりのデート。夜には二人きりで会えるのだ。私が着飾ったところで大差ないと知りつつも、何日も着ていく服に悩んで、ヘアアクセサリーを買い足したりした。


国内屈指の大きな旧財閥の家に生まれた夏雪は、26歳という若さにして会社の副社長を務める。さらに監査役やら外部顧問やら、たくさんの仕事を抱えているのだ。


私は夏雪の会社の営業社員として七年間務めていたけれど、出勤するのは今日が最後になる。


彼と出会ったきっかけは、彼が副社長という立場を隠したまま、私の偽りの部下になったことだった。生意気極まりない当時の夏雪と何度も衝突して、けれど、どうしようもなく惹かれてしまった。


華々しいだけでは語れない彼の仕事を知って、
今後は夏雪の仕事を支えるために会社を辞めるとを決めていた。どんな雑務でも、忙しい夏雪の何かひとつでも支えになれたらそれでいい。


退職の挨拶のためお菓子を手渡しながら各部署を回っていると、遠くに夏雪の姿を見つけた。すぐに彼だ分とかるのは、私が恋をしているからだけでは、ない。
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