君と一緒なら



「えっ‼」


 ……っ⁉


 青野くんが突然驚いたような声を出した。

 私は、その声に驚き過ぎて声が出なかった。


「今、『麻倉希空』って言った?」


 ……?

 言ったけど……。


「……? うん……?」


 何が何だか。
 わけがわからない。

 そう思ったまま、そう返事をした。


「君があの麻倉希空さんっ⁉」


『あの』って……?

 青野くん、それは一体どういう……?


「実は俺、去年の文化祭のときから君の名前は知っていたんだ」


「えっ⁉」


 昨年の文化祭のときから……⁉

 どういうこと⁉


「去年の文化祭のとき、各クラスから五人ずつ、
 上手に描かれている絵がフリールームに展示されてたでしょ。
 それで俺は見に行ったんだ。
 みんなの上手な絵を見てみたくてさ」


 青野くんはそう話し始めた。


「やっぱり思った通り。
 みんな、すごく上手くてさ。
 俺、感動しちゃって」


 そう話している青野くんの目はキラキラと輝いていた。


「どの絵も感動した。
 ……だけど」


 だけど……?


「その中でも一つ、特に心を打たれた絵があったんだ」


 心を……打たれた……?


「その絵を見て感動したのはもちろんのこと、
 なんてい言えばいいのか、気持ちが晴れやかになるというのか、
 とにかく一言では言い表すことができない、そんな絵だった」


 青野くんがそんな気持ちになった絵。
 それは、どんな絵なのだろう。
 そして誰が描いたのだろう。


「そんな絵を描いたのは誰なんだろう。
 俺、すごく気になっちゃって。
 だから俺、すぐに見たんだ。
 絵の下に貼られている名前を」


 それで、その絵を描いた人の名前は……?

< 10 / 54 >

この作品をシェア

pagetop