君と一緒なら



「私ね、小学生の頃からバレエ教室に通っていて、
 そこで仲良くしてる子がいるんだけど」


 それが何……?


「その子、麻倉さんと中学校が一緒なんだって」


 え……。


「それでね、その子が教えてくれたよ」


 何を……?


「……麻倉さんのこと」


 私の……こと……?


 って、まさか……‼


「さっきは『あのこと言っちゃっても』なんて言っちゃったけど、
 心配しないで、大丈夫。
 言わないよ、誰にも」


 誰にも言わないって。
 黒川さん、そのバレエ教室の友達から一体何を聞いたの⁉

 私のこと……⁉

 それって、もしかして……‼


「青野くんと二度と関わらないって約束してくれたら」


 ……‼


「約束、してくれるよね」


 そんな……。


「麻倉さんにとっては好都合じゃない?」


 好都合……?


「青野くんと関わらないだけで、私は麻倉さんのことは誰にも言わない」


 なんで……。


「こんないい条件ないんじゃない?」


 なんで……こんな……。

 こんなにも……。


「ねー、麻倉さん」


 えげつない。

 黒川さんは、とてもにこやかに話しているけれど。

 言っていることは、とんでもなくえげつない。


「だって、誰にも知られたくないでしょ。
 今一緒にいる友達にも……青野くんにも……」


 わかった。

 なんで黒川さんは笑顔になればなるほど恐怖で威圧感を感じるのか。

 それは、黒川さんの顔をよく見ればわかることだった。

 黒川さんの笑顔は。
 目が……全く笑っていない。


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