君と一緒なら



「……お前さぁ」


 そのとき。

 黒川さんは私のことを『お前』と言った。

 声のトーンは『ねぇ』と言ったときと変わらないまま。


「どういうつもりだよ」


「…………」


 できない。
 出すことが。
 声を。
 驚き過ぎて。

 違い過ぎる。
 この間の黒川さんと。


 それにしても。

 どういうつもりって……?


 そんなこと。
 私の方が訊きたいくらい。


 なにがなんだかわからない。

 心の中は混乱しそうになっていた。


 それでも。
 なんとか冷静になろうとした。

 けれど。
 そう思えば思うほど。
 混乱は増していく。



「ふざけんなよ‼」


 容赦ない。

 黒川さんは。
 そんな私のことを。
 待ってはくれない。


 比例している。
 心の中の混乱が増すと。
 黒川さんの口調の荒さも増す。


 一体どうしたらいいのか。
 どう対応すればいいのか。


 このままでは。
 黒川さんに何をされるかわからない。


 黒川さんが恐ろしい。
 恐ろしくて恐ろしくてたまらない。

 あまりの恐怖で全身が震えてしまいそう。


 逸らしたい。
 目を。
 黒川さんから。

 けれど。
 逸らすことができない。
 恐怖のあまり。


 黒川さんという恐怖。
 それに怯えている中。

 全く容赦する気配がない、黒川さん。


 絶対。
 まだ何かを言ってくる。
 黒川さんは。

 そんな雰囲気が。
 はっきりと見えていた。


 黒川さん。
 次は何を言ってくるつもりなのだろう。

 私は恐怖でいっぱいだった。

< 38 / 54 >

この作品をシェア

pagetop