君と一緒なら

2.休んじゃおう




「ところで、どうして信号が赤だったのに車道に出たの?」


 男の子は不思議そうにそう訊いた。


「あ……えっと……
 ちょっと考え事してて……」


 そう返答するしかなかった。

 まさか。
『学校に行きたくないということで頭の中がいっぱいになっていた』
 なんて、言えるわけがない。


「そうなんだ。
 でも考え事も、ほどほどにしないと。
 また今みたいに危険なことになってしまうから」


 男の子は心配そうにそう言ってくれた。


「うん、そうだね、ありがとう」


 確かに男の子の言う通り。
 考え事もほどほどにしないと。

 また危険なことになってしまうかもしれない。

 気をつけなければ。

 改めてそう思った。



「じゃあ」


 私のことを心配してくれた後。
 男の子は『じゃあ』と言った。

『じゃあ行くね』という意味だと思って。
 私も『じゃあね』と言おうと思った、ら……。


「今日は俺と一緒に学校に行こう。
 また、さっきみたいなことになると危ないから」


 え……えぇぇーっ‼


 一緒に行く⁉
 学校に⁉

 そっ……それは……っ。


「だ……大丈夫だよっ。
 すぐに同じことなんて起きないと思うからっ。
 それに初めて話した人に一緒に通学してもらうなんて悪いからっ」


 なんて言ったけれど。

 本当は、そうではなくて。

 心の中では必死だった。
 どうしたら男の子と一緒に通学しなくて済むのかを。

 男の子と一緒に通学したら。
 絶対に学校に行かなければいけなくなってしまうから。


「……あのさ……
 違っていたら、ごめんね。
 もしかしてだけど……」


 もしかして……なに……? 


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