結婚から始めましょう。
「蓮が来てるんだって?」

その時、廊下から男の人の声が聞こえてきた。
一瞬にして蓮の体に力が入る。どうしたんだろう……

「はい。旦那様に結婚の報告をしにいらっしゃってますよ」

「へえ」

ばたばだと遠慮のない様子で、一人の男性がリビングに入ってきた。
年は蓮と同じぐらいだろうか。どことなく、顔のパーツが蓮と似ているものの、纏っている空気は全く違う。攻撃的というか、温かみがなくてこちらを威圧する雰囲気がある。

「久しぶりだな、蓮」

さっきまで幸太郎が座っていた場所にどかりと座ると、不躾に放った。そして何かを探るように、私に遠慮のない視線を向けてくる。

「真人さん……お久しぶりです」

この人が従兄弟の真人か。この様子だと、2人は確実に仲が良くなさそうだ。
真人は、上から見下すような態度を取っている。

「結婚をしたと聞いたが……」

そう言って、再びジロリと私を見てくる。

「はい。妻の桃香です」

蓮は仕方がないという様子で、私を紹介した。

「はじめまして」

軽く会釈をするも、真人からは特に反応がなく、値踏みをするように見られるばかりだ。

蓮の表情はどんどん曇っていく。それでも真人の視線から私を庇うように、声をかけて注意を逸させた。

「報告が遅くなってすみません。来年中には式を挙げる予定なので、その時はよろしくお願いします」

「ふん。まあ仕事の一つだ。顔は出すさ」

感じ悪い。真人は蓮の全てが気に入らないようだ。


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