エリート副社長とのお見合い事情~御曹司はかりそめ婚約者を甘く奪う~


もしも訪ねてきたのが会社の男性社員だったら部屋にはあげなかった。
用事があると言われても玄関先で帰ってもらった。

私だってもう大人だし、ひとり暮らしの部屋に異性をあげるのがどういう意味を持つのか知らないわけじゃない。
自意識過剰と言われても警戒心や自衛が必要だとも思っている。

だから、四宮さんの言葉は心外だった。

ハッキリと言った私に、四宮さんはやや驚いた顔をしたあとで、ふっと笑みをこぼす。
自嘲するような笑みだった。

「信頼してくれるのは嬉しいが……あまりに意識されないのも男としては悔しいものがあるな」

言われた直後だった。
こちらに体を寄せた四宮さんによって、影が落ちる。視界が塞がれたと思った瞬間には唇が重なっていて息を呑んだ。

数秒して触れていた唇が離れる。

それでもまだ目を丸くしたまま微動だにできない私に、至近距離から四宮さんが告げる。

「もう一度伝えておく。藤崎のことがこういう意味で好きだ。意味はわかるな?」

時間差で真っ赤になっている私がしどろもどろになりながらもなんとかうなずくと、四宮さんは満足そうに笑い「いい返事だ」と言った。


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