エリート副社長とのお見合い事情~御曹司はかりそめ婚約者を甘く奪う~


〝不特定多数〟という言葉で、四宮さんが寝言で呼んだ女性の名前を連想した自分に眉を寄せ、四宮さんに限ってそんなわけがないと頭を振って可能性を振り落とす。

けれど、そんなことをしたところで実際にはきれいさっぱり忘れるなんてわけもなく、気になる気持ちを止められずに「あの」と切り出す。

氷室さんなら四宮さんを大学時代から知っているし、名前が挙がった女性とも知り合いかもしれないと思ったから。

「四宮さんのことなんですけど。四日前、氷室さんの部屋で四宮さんが寝言を言ってたんです。〝ゆり〟とか〝かすみ〟とか……。その名前に心当たりがあったりしますか?」

チラッと見上げると、氷室さんは真顔で私を見ていた。
そのあとで、バツが悪そうに笑う。

「あー、まぁ、四宮さん案外遊んでるからなぁ。名前はわからないけど、そのうちの誰かってとこだろ」

思わず「え」と短い声が漏れた。
明らかに女性の名前だし、過去なんらかの関係があった人なんだろうなとは思っていた。でもまさか、遊んでいるなんて答えが返ってくるとは思わなかっただけに声を失う。

遊んでるって、私の想像する〝遊んでる〟で合ってる?
でも、あの四宮さんが? 氷室さんが言う〝遊んでる〟なんて相当だけど……本当に?

黙り込み呆然としている私を見て、氷室さんは苦笑いで続けた。


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