エリート副社長とのお見合い事情~御曹司はかりそめ婚約者を甘く奪う~


氷室さんの部屋で三人で朝食をとり終えたのを見計らったように鳴った、四宮さんの携帯。

着信はお母さんからで、内容は〝鈴奈ちゃんとはうまくいっているのか〟という、半分茶化すような内容だったらしく、四宮さんは早々に切ろうとしたのだけれど。

途中で携帯を奪った氷室さんが「鈴なら今一緒だし、これから四宮に連れて行かせようか」などと話を進めたせいで、午後お茶の時間に四宮さんのご実家を訪ねる運びとなってしまった。

「あのテンションになった母を諦めさせるのは無理だ」と早々に諦めた四宮さんは、一度シャワーや着替えを済ませるために帰った。

「十四時前に迎えにくる」と微笑まれてしまえば、私もうなずく他なかったけれど……心の中で氷室さんを恨んだのは言うまでもない。
いつもの調子に戻ったのは嬉しいけれど、少しは空気を読んでほしい。

私にも私のタイミングがある。
だから、四宮さんが帰った後で責めると、首を傾げられた。

「なんかまずかったか?」
「まずいというか、私はまだ四宮さんにも本当のことを話せていないんです」
「本当のこと?」
「生い立ち……というか。氷室さんのおうちとの関係とか、付き合いのことです」

洗濯物を干しながら言うと、氷室さんは「それが?」と不思議そうにしながら次の洗濯物を渡してくる。

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