瞳には雫を,唇には歌を,この世界に祝福を。


エラが頭を下げると同時にそう言い放った。

「ええ!お礼なんていいよ!
それに…お互い様,でしょ?」

私は話を聞いてもらい,エラには1晩住む場所を与えた。

こう考えると,私たちの絆はそこまで深くない。

ただ1晩だけの,日常に紛れたほんの少しのアクシデント。

でも,なんだかずっと前にもあっていた気がするんだ。

私とエラの間には,1晩だけでは作れない,誰も入ることができない絆があると思うの。

だから,謙遜なんていらない。

エラにもそれが伝わったのか,ニコリと笑って言った。

「また,会いに来て欲しいの。
前にも話した通り…復習は協力できないけど困ったことがあったらいつでも来て,話して…ね?」

「うん!ありがとう!!」

私もエラに負けじと笑顔で笑いながら,また来るね,と約束をした。

暖かな風が,私たちを包み込んでくれた。
< 98 / 169 >

この作品をシェア

pagetop