夏休みだけ、君とは知らずに
「そろそろ時間だよ!逢いに行く時間でしょ」
そう俺に声をかけたのは去年結婚した妻の優香だった。俺たちは小中高が同じで隣の家同士の幼なじみだ。今年24になる。
「ああ、もう11時か。よし出るか」そう言って俺は立ち上がった。
初冬を迎え少しずつ寒くなってきた。
「雪が降ったらさ、雪だるまでも作ろっか」と優香が言った。優香は冬が大好きらしく雪が降るのをとても楽しみにしている。
俺たちはここ最近運動してなかったから車は使わず目的地まで歩くことにした。と言っても結構近い。
2人でどんどん冬景色になっていく街を見ながら昔の話をしたり今日の夕飯のことを話したりしてあっという間に着いた。
「私飲み物買ってくるから話してて。」
優香はきっと気遣ってこの場を離れたんだろうり2人で話す時間を作ってくれた。
「久しぶり、元気だったか。最後に会ってからもう1年経ったな。優香は今飲み物買って来てくれてるからもう来ると思うよ。寒くなったな、お前はいつも走ってばっかでしょうもないイタズラばかりしてゲラゲラ笑ってたな。懐かしいよ。」俺は空を見上げて高い場所で飛んでる鳥を見たあと俺はまた喋り始めた。
「お前が言ってた通り鳥ってすごいよ。どこまでも飛んでさ。もう6年経ったぞ。俺ももう24になってしまったよ。天国で元気にしてるか、光。」
光は俺の幼馴染で同級生。いつも優香と俺と光でバカしてたっけ。光はいつも明るくてクラスの人気者の女の子だったんだ。
その光が6年前の今日、元々持ってた心臓の病気が悪化して入院治療中に肺炎と患って呆気なくいなくなってしまった。
「お待たせ!!はいこれコーヒーね。光久しぶり。私たち結婚1年経ったよー!光はそっちでどう?元気してる?」優香と俺はお墓の掃除もして帰ることにした。帰る途中優香が寄りたいところがあると言ってつい最近始めたオシャレなカフェに入った。
「ここのマフィン美味しんだって!!だから食べてみたくて寄っちゃった。後で光の家に届けようかなって思ってさ。」と言って注文しいくつかテイクアウトさせてもらった。
「あいつカフェ大好きだったもんな。いつも口開けばカフェ行こうって言ってきて俺たちついて行くのに必死だったっけ」そう言って俺は昔のことを思い出していた。
あの高校三年生の夏休みのことを。
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